相続について民法編

相続の方法

法定相続
相続とは民法882条以下で規定されている、人が亡くなった場合一定の物を除き(一身専属権等)、その亡くなった人の財産などを引き継ぐ制度です。
遺言や遺産分割を除いて、原則として相続の方法には以下の三つが有ります。
それは、「単純承認」「限定承認」「相続の放棄」です。

単純承認

単純承認とは死亡した者(法律用語では「被相続人」。以下被相続人と言います。)の全ての資産・負債を引き継ぎます。

民法第920条
相続人は、単純承認をしたときは、無限に被相続人の権利義務を承継する。

限定承認

限定承認とは単純承認と違って、承認した範囲内で被相続人の財産やその財産に対する範囲内の債務を引き継ぎます。

民法第922条
相続人は、相続によって得た財産の限度においてのみ被相続人の債務及び遺贈を弁済すべきことを留保して、相続の承認をする事ができる。

限定承認は、単独では出来ません。相続人全員が共同して家庭裁判所に申述しなければなりません。

相続の放棄

相続の放棄とは、その相続について、一切関与しないと言う意思表示です。これによってその亡くなった人からの相続には一切関与しなくなります。

民法第939条
相続の放棄をした者は、その相続に関しては、初めから相続人とならなかったものとみなす。

相続の放棄については、限定承認と違って単独でもできますが、相続の放棄をしたい旨を家庭裁判所に申述しなければいけません(民法第938条)。

相続人

相続人については、配偶者(夫が死亡した場合は、妻。妻が死亡した場合は、夫。の事を指しています)は常に相続人となります(民法第890条)。また子が居る場合(養子を含む)については、配偶者と子になります。
次に子が居ない場合については、孫が居るときは孫になります。また、孫も居ない時はその下の子曾孫になります。
子の下が全く居ない場合次に直系尊属になります(民法第889条)。直系尊属とは一番分かりやすく言うと親になります。親が居ない時は祖父母になります。勿論この場合でも常に配偶者は相続人になります。
つまり・・・まず自分から見て下に行き、それでも居ない時は上に行くと言う形になります。また子も親も居ない時(その下もその上も全員居ない場合)、次に兄弟姉妹に行きます(民法第889条)。兄弟姉妹が居ない時はその兄弟姉妹の子まで相続人になる場合もあります。しかし、兄弟姉妹の孫まで相続人になる事は有りません。
これをまとめると・・・・
第一順位 配偶者と子(子が居ない時は、孫。孫も居ない時は曾孫と続く。)
第二順位 配偶者と親(親が居ない時は、祖父母。祖父母も居ない時は、その祖父母の親(曽祖父母)となります。)
第三順位 配偶者と兄弟姉妹(兄弟姉妹が居ない時は、兄弟姉妹の子(甥や姪)になります。)
(注)被相続人が亡くなる前に配偶者が亡くなった場合(例えば夫が亡くなる前に妻が亡くなった場合)でも、配偶者の親(妻の親)や配偶者の兄弟姉妹(妻の兄弟姉妹)が相続人になる事が有りません。

相続分

上記の順位を法定順位と言い、遺言や遺産分割協議をしない限りこの順位となります。
第一順位については配偶者が財産の2分の1、子(何人居ても子全員で)が2分の1となります。
第二順位については配偶者が財産の3分の2、親(何人居ても親全員で)が3分の1となります。
第三順位については配偶者が財産の4分の3、兄弟姉妹(何人居ても兄弟姉妹全員で)が4分の1となります。


遺言

遺言方法

遺言方法は「普通の方式」の遺言と「特別の方式」の遺言に分かれます。
一般的には「普通の方式」の遺言ですが、差し迫った状況にある時に「特別の方式」の遺言が用いられます。

「普通の方式」の遺言

「普通の方式」の遺言は更に「自筆証書遺言」「公正証書遺言」「秘密証書遺言」に分かれます。

自筆証書遺言
一般的に「遺言」と言えば、これを指す事が多いです。自分で遺言の全文・日付を書き、最後に氏名・押印する方法によって成立します。

公正証書遺言
証人2人以上の立会いの下、遺言者が遺言の趣旨を公証人に口授する→公証人がこの口述を筆記→証人と遺言者に聞かせるか見せる→遺言者と証人が、署名押印する→公証人が署名押印する
原則としてこの流れに沿う遺言方法です。

秘密証書遺言
遺言者が遺言を作り、署名・押印する→封筒に入れて遺言と同じ印鑑で封印する→公証人1人、証人2人以上の前でその封書を自分の物で有る事を申述する→公証人がその申述と日付を記載し、遺言者と証人が署名・押印する
この流れに沿う遺言方法です。

「特別の方式」の遺言

「特別の方式」の遺言は更に「死亡の危急に迫った者の遺言」「伝染病離者の遺言」「船舶遭難者の遺言」に分かれます。


遺産分割

工事中


遺留分

遺留分とは、法定相続以外の方法で相続をした場合、相続人に一定の金額について相続分が戻る制度の事を指します。
言い換えると、相続人は一定の金額までは最低でも相続出来る事になります。
ただし、兄弟姉妹については、遺留分の制度は有りません(民法第1028条)。
その最低金額ですが、以下の様に定められています。
直系尊属だけが相続人の時・・・・被相続人の財産の3分の1
上記以外の時・・・被相続人の財産の2分の1